解説
離婚が成立する前に先に家をでると、「悪意の遺棄」を指摘されて慰謝料を相殺(互いのもつ債権を相当額の範囲で消滅させること)されることがあります。
「悪意の遺棄」というのは、夫婦の同居義務を果たさずに、一方的に家を出るという行為を指し、裁判上の離婚理由の1つにあげられています。(民法770条)
しかし、これはあくまで家を出ることに正当な理由がない場合の話で、単身赴任や病気療養、暴力などの事情がある場合には「悪意の遺棄」とはなりません。
たとえば「夫や浮気をして家に帰ってこない」「浮気相手から無言電話や尾行などの嫌がらせをされている」など別居を踏み切るの足る事情がある場合には、先に家を出たからちい離婚訴訟時に不利になることはないでしょう。
ただ用心したいのは、配偶者側がその理由に関する証拠を隠滅するという可能性があるということです。
裁判所は双方の言い分や証拠をもとに、公平に判断を下す場所です。
証拠がなければ、たとえそれが事実であってもなかなか認めてくれません。
確実に自分の言い分を認めてもらうためには、「配偶者と浮気相手のメールのやりとりの形跡やホテルの領収書などを入手する」「浮気相手の嫌がらせ電話の録音をする」「尾行を受けた際に警察に相談しておく」などの証拠集めをしておいたほうがよいでしょう。