解説
離婚で手にする財産としては、財産分与の他に、慰謝料があります。
財産分与は、夫婦で築いた財産に対する貢献度によって分配されるので、離婚の原因を作ったほうが責任を問われて取り分を減額されるようなことはありません。
これに対し、慰謝料は相手から受けた精神的苦痛に対して支払われるお金です。
一般的には、浮気や不倫などの不貞、それに暴行や虐待などが、慰謝料請求の対象となることが多いといえます。
離婚原因としてよく聞かれる「性格の不一致」のようなあいまいな理由では、慰謝料が発生することはまずないといえます。
また、「慰謝料は財産分与の範囲に含まれる」という場合と、「慰謝料と財産分与は別々に請求されるべき」という場合があります。
裁判(訴訟)で財産分与が決定した後で慰謝料の請求をすることも可能ですが、現実には、慰謝料は夫婦の共有財産の中から支払われるので、財産分与と慰謝料の両方を兼ねる場合が多いようです。
しかし、財産分与と慰謝料とは法律上は一応別のものとして規定されていますから、両者をきちんと区別してしっかり確認するように注意しましょう。
調停調書などに「今後名目のいかがを問わず、財産上の請求を一切しない」という一筆を書き入れる際は特に要注意です。
面倒がって簡単にサインをしてしまったために、受けとれるべきものも受け取れなくなるおそれがあります。
なお、慰謝料は民法上の不貞行為に対して認められるもので、離婚後3年以内に請求しなければなりません。(民法724条)
慰謝料の相場は意外に低い
慰謝料の金額は財産分与とあわせても200万円から600万円程度のケースが多いといえるでしょう。
しかし、慰謝料は精神的な苦痛に対して支払われるものですから、はっきりとした基準や相場があるわけではなく、全くケースバイケースで決まるものなのです。
たとえば、お金持ちの夫がどうしても離婚したければ、多少金額が高くても妻の提示するお金を支払うでしょうし、逆に妻の方が「とにかく離婚したい」と思っていれば慰謝料の額にはそれほどこだわらないでしょう。
しかし、通常は、芸能人のように何千万円もの多額の慰謝料を請求できるということはありません。
「財産分与だけでなく、慰謝料もあるのだから、けっこうな額になる」と考えるのは残念ながら甘いといえます。
慰謝料はどうやって決定するか
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・離婚原因はどんなことか
・有責性の程度(一方的なものか双方の責任か)
・資力や婚姻期間など
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総合考慮して慰謝料額の決定